いしいしんじさんの回答
関西に住む母親の、皆が皆、そろって四六時中テンション高く、しゃべくり倒しているわけではない。
越してきたあなたが、いっぱい笑い、楽しげに耳を傾けてくれるから、あなたの前ではとりわけ、ついつい張りきって、ふだん以上にはしゃいでしまう、というのも多分にあるだろう。
劣等感など、燃えるゴミの日に捨ててしまおう。会話とはその土地の空気だ。吸って、吐いて、日々を暮らすうち、子どもが中学にあがる頃には、あなたも否応なしに、「はよジャージー出さへんと、あんた、洗濯機はいってぐるぐる回ってもらうで!」くらい口をついて出るようになる。
おもしろい、笑えること自体はむろんマイナスではない。ただ、口先だけ滑らかで、ずけずけ人の心に踏みこんでくるような相手もいる。空疎な持論ばかりで中身がない人も、残念ながらこの世には少なくない。
ユーモアとは、ヒューマニティー、人間性に通じている。けたたましい笑い声など重要でない。相手の声に耳をかたむけ、親身に心を配り、頭にのぼったことをゆっくりと話す。そのうち相手の顔が自然と柔らかにほころんでいる。人と人との心の交歓。
本当のユーモアとは、そういうものではないか。
