没頭飯』(著:鈴木もぐら/ポプラ社)

うまいもんを食うために生まれてきた

母は、私と妹を養うために休まず働いていました。食べることが好きで、「私はうまいもんを食うために生まれてきたんだ!」と突拍子もなく叫ぶんです。うまくいかないことの多い人生だけど、「いや、うまいもんを食うために生まれてきたんだから、別にいいか」と、気持ちを収めていたのかもしれません。

外食をするために、質入れしたり、キャッシングしたりして費用を捻出してね。家族の誕生日には、とんかつ屋でロースカツ定食が定番でした。

ある時、私の食いっぷりを見た隣のおじさんが、ヒレカツを分けてくれようとしたことがあって。でも、私は母から「貧乏だからって、絶対に人様からものをもらうな」と口酸っぱく言い聞かされていた。

それで仕方なく遠慮したら、店を出た途端、「なんでもらわなかったんだ!」ってぶん殴られました。そんな理不尽な思い出も書いています。

一方、父親は子育てをまったくしない人。それでも僕が4歳くらいの頃には、近所の居酒屋へよく連れていってくれました。私がよく食べていたのは、ナガラミという巻き貝。

小さな子どもが、楊枝でせっせと貝の身を引き抜く姿がかわいかったのでしょう。そんな私を見ることで、子育てしている気分を味わっていたんだと思います。今になって、私も父の気持ちがわかるようになりました。