古代の学問とはいえ、現代に繋がる点が多いんですよ。たとえば、当時は戦争などで自然が荒廃し、石油のような資源もない。ですから、燃料を含め、生活に必要な資源の多くを植物から得る暮らしでした。
乾燥が厳しい気候のなかで、植物をどう育て、どう収穫し、どのように活用するかは大問題。そこで、テオプラストスは、約500種類の植物の特徴を研究して、それぞれに応じた栽培をし、適した使い方をするのに役立つ実用的な知識をまとめました。
オリンピック競技大会では勝者に花冠が授けられるのを、皆さん見たことがあるでしょう。これは古代からの伝統です。花冠は冠婚葬祭だけでなく、政治の場や酒宴にまで被る日常的なものだったからか、テオプラストスは「花冠」だけに1巻を割いています。
ほかにも造船や建築用の木材、窯業や鉱業用の木炭について、食用になる果樹や野菜、ハーブ、穀物、香料や薬に用いる植物についてなど、用途の異なる植物群ごとに栽培や利用の仕方を説いていて、この本は応用学の書でもあるのです。
じつはこの『植物誌』は、時代を超えて高く評価されています。18世紀の植物学者で「分類学の父」と呼ばれるリンネは、近代以前で最高の植物学書と評し、テオプラストスに「植物学の祖」の名を献じました。
ページをめくるたびに、古代ギリシアの文化や暮らしぶりが垣間見える面白さもあり、時を忘れました。