息を呑んだ観客席には……

この映画を見るに際して。私は、ぬいさんを何匹か同行しておりました。だって、ぬいさんのお話だもん。せっかくの映画鑑賞だ、古参で、普段、あんまり外出できない、結構大きめのぬいさんを中心にして。普通の鞄には入らないようなサイズのぬいさんを、紙袋にいれたりして、映画館に入ったら……その子達を観客席に載せて。


ごめんなさい。お金を払っていないぬいさんが座席に座るのって……駄目、ですよね。だから私、最初は、この子達を膝の上に載せて、映画鑑賞しようと思っていました。
ただ。このシネコンって、もう……その……何ていうか……とても好きなシネコンなんですが……経営、大丈夫かって聞きたくなるくらい……空いているのが普通だったんですよね。今回も、空いていないかなあって思ったら……思った以上に空いていて……。
とにかくまわりが空席ばっかりだったので、ついつい私、やってしまいました。
うちのぬいさん達……ついつい、観客席に座らせてしまいました。
ふへー。いけないよなあ。ちゃんとした映画館のちゃんとした座席に、うちのぬいさんが座っている。これ、見ているだけで私は楽しいんだけれど……常識的に言って、良識的に言って、これ、やってはいけないこと、なんだよね。ちょっとでも人が来たら、この子達、私と旦那の膝の上に隔離しないと。

でも。
この映画が始まる前、私は、息を呑みました。
だって。
観客席には、うちの子以外にも、ぬいが座っている!
私がやった訳でもないのに。
プーは勿論のこと、イーヨーとかその他、『くまのプーさん』に出てくる〝動物〞達、そいつらのぬいぐるみが、何故か、何匹か、観客席に座っているんです!
こ。
こ、これは。
この映画を見にきたひとが……『くまのプーさん』の映画を見る為に、それだけの為に、プーやイーヨーのぬい、連れてきてくれたのか?
一瞬、泣きそうになりました。

観客席に、ぬいがいる。
いや、これ、どのぬいもお金払っていないと思うんですけれど。
(多分、どのぬいの持ち主の方も、自分の膝の上にぬいを載せようと思ってここにいらして……でも、見たら、あまりにも、あまりにも空席が多かったので、ついつい、座席にぬいを座らせてしまったのではないかと思っております。)

でも。

観客席に、ぬいがいる。

こんなに素敵なことは、ないと思います。
自分家のプーに。自分家のイーヨーに。自分家のこぶたに。プーさんの映画を見せてあげたい、そういうことを思っているぬいぐるみ所有者の方が、何人もいる。
そして、実際に、わざわざ鞄や何かにぬいをいれて、連れてきてくれて……そして、映画が始まる前、あたりが暗くなったら、鞄からぬいを出して、座席に座らせて、一緒に映画を鑑賞しようとしている。
映画より前に、「こういうことを考えるひとが、私以外にも複数人いる!」って事実に……私は本当に感動して……も、泣きそうになってしまいました。