ぬい所有者の抱く恐怖
確かに泥塗れになるのは、ぬいぐるみにとって最悪に近いことなんですが……同じくらい、いや、もっとずっと怖いのは……蜂蜜塗れになること。
息ができなくなりそうでした、私。怖くて怖くてたまらなくなりました。
泥は。最悪、まず、乾かして、完全に乾いた処で土をはたき落とすことができます。それでも、汚れは多分落ちないだろうし、ぬいぐるみにはもの凄い被害があるんですけれど……蜂蜜塗れは。
そもそも、乾くか? 乾いた場合、それ、飴のようになっちゃわない? その場合、どうやって蜂蜜落とすの。物理的に飴のようになった部分をそぎ落とそうとしたら、本体ぬいにどのくらいの被害がでる? それを避ける為には、お湯につけて、蜂蜜が溶けだすようにする? でも、蜂蜜って、どのくらいお湯に溶けてくれる? どうやって、蜂蜜塗れになったぬいぐるみを、もとの健康な状態に戻すことができる? いや、そもそもそれ、できるのか?
映画を見ている間中。私、頭の中でずっと、〝万一泥まみれになってしまったぬいプーを綺麗にする方法〞〝もっと万一、蜂蜜塗れにプーがなってしまった場合、どうやればそれが綺麗になるのか〞ばっかり考えていて……考えれば考える程、私はもの凄く怖くなってしまいました……。
(ところで。この私の 〝恐怖〞 は、全然意味がないことだって、実は私にも判ってはいます。もともとの原作、ミルンの『クマのプーさん』では、なんとプー、自分から泥塗れになってしまうってシーンがあるからです。高い木の上に蜂の巣があって、そこから蜂蜜を盗ろうと思ったプー、クリストファー・ロビンに青い風船をもらって、それにつかまって上空まで上り、蜂の巣から蜂蜜を盗ろうって戦略を練り……でも、風船につかまった熊が蜂の巣に近づくのは、何かちょっとばればれかなあって思い……自分から泥塗れになって、真っ黒になり、「この風船は青い空、そして、それにつかまっている自分は真っ黒だから、青い空の下にいる雨雲」っていう偽装をしようとする……ん……ですよね。まあ、これは、どこからどう見ても、「風船につかまっている黒い熊が蜂の巣に近づいている」以外のものには見えないので、偽装にも何にもならなかったのですが。とにかく、原作ではプー、自分から泥塗れになっている訳です。
けれど。小説の中で、「プーが泥塗れになる」のと、映画で実際にぬいぐるみのプーを見て、「この子が泥塗れになる」のを想像するのは……話がまったく違います。ぬいぐるみ所有者としての私は、この恐怖に耐えられませんでした。)

