(写真提供:越乃さん 以下すべて)
100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第129回は「今更ながらの、『FNS歌謡祭 夏』M!LK×宝塚歌劇団の夢の共演」です

前回「10年前、福島の人気つけ麺店へ。あまりに空腹だった私は、1kgのつけ麺を注文して…」はこちら

記憶の時計を少し巻き戻させてください。
そう、『2026 FNS歌謡祭 夏』。
若手ボーカルダンスグループM!LKさんと、宝塚歌劇団花組の5人のスターさんによるコラボレーション。
リアルタイムでは見ていなかったのですが、SNSが尋常じゃない熱量で盛り上がっていて知りました。
もう放送からずいぶん経った乗り遅れ感はありますが、この夢のコラボレーションを、今更ながら、じっくり語ってみようと思います。

アイドルと宝塚。
一見すると相性がよさそうで、じつはなかなかの難題です。
どちらも完全に完成された、まったく異なる世界観を持つ者同士だからです。
どちらかが遠慮すれば物足りないし、お互いが全力で自己主張し合えば、あっという間に世界観の大渋滞になります。
だから、こういう共演は案外難しいのです。

宝塚の様式美は様式美としてあってほしい。
そんな思いがある私は、少し身構えていました。

ところが、その心配は始まってすぐになくなりました。
宝塚は宝塚のまま。
M!LKさんはM!LKさんのまま。
どちらも自分を薄めることもなく、それでいて相手の光も奪わない。
不思議なことに、お互いがお互いをこれ以上ないほどに引き立て合っていました。

これは言うほど簡単ではありません。
お互いの世界にそっと歩幅を合わせる、全員のその絶妙な距離感。
王子様感のあるM!LKさんだからこそ生まれた空気なのかもしれません。

曲は耳にしたことがあったものの、M!LKさんをちゃんと拝見するのは、今回がほぼ初めてでした。
俳優さんとして認識していた方もいて、「えっ、この方も⁉」と驚き、一人で答え合わせをしました。
皆さんそれぞれに魅力があって、爽やかで、きちんと格好いい。
弾けるような笑顔と、キレのある動きで魅了していくパフォーマンスの高さには、思わず引き込まれました。

なるほど、人気があるのも納得です。
スマートな身のこなしのM!LKさんの王子様感があればこそ成立した、奇跡的なバランスでした。
まったく異なる世界感と交わることで、かえって宝塚の様式美の輪郭がよりはっきりするという新たな発見もありました。