見たいもの知りたいことが山ほど
ただ、一つだけ、心残りに思うことがあります。それは、植物学の師であり、よき理解者、助言者だった夫に本の完成を見届けてもらえなかったことです。夫は第3分冊の仕上げの最中、21年8月に突然亡くなりました。
健康診断でもまったく異常がなく、亡くなる日の朝も、一緒に話をしながら朝食をとり、新聞を読んで、本当に、いつも通りの朝でした。起きてから2時間ほど後、ほんの10分ほど私が居間を離れて、戻ったら夫は倒れて亡くなっていたのです。
青天の霹靂で茫然自失……。しばらくは食事も喉を通らず、仕事も手につかない状態が続きました。そんな時、何気なく見たテレビ番組で、歌人で細胞生物学者の永田和宏さんがおっしゃった言葉が、ふと耳に入ってきたのです。
「愛する人を失う哀しみは、その人の前で、最も輝いていた自分を失う哀しみだ」と。12年前に奥様を亡くされた永田さんの思いのこもったこの言葉は、ただ漠然と抱いていた喪失感の原因を解き明かしてくれて、心に響きました。そして、輝いていた日々を胸に明日を生きようと思わせてくれたのです。