渡辺謙さんに救われて

俳優として仕事をするなかで、悔しい思いをしたことはたくさんありました。スケジュールがキツイこともありましたし、求められている技量に達していなかったことも数えきれないくらい。

井上祐貴さん
井上祐貴さん

最近では舞台の『マクベス』や大河の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』は、自分より大先輩が圧倒的に多い中で、素敵な役をいただきました。期待されているけれど、自分はその期待に応えられていないと思う瞬間もあって。自分をどう奮い立たせるか、自分との闘いみたいな時期でしたね。

現場で救われたこともたくさんあります。『べらぼう』では渡辺謙さんと一緒のシーンがあったのですが、僕がうまくセリフを言えなくて、何テイクも重ねてしまったんです。すると、それまで一切間違えなかった謙さんが急に間違えられて。僕が都合よく受け取っているだけかもしれないけれど、周りの方が「謙さんがミスすることは本当にない」とおっしゃっていたので、謙さんが気を遣ってくださったのかなと思っています。

振り返ってみると、先輩方が僕が芝居をしやすいような空気を作ってくださっていたのかなと思える場面が多々あったし、ちょっとした空気の和みに救われたことも山ほどありました。