嗚呼、全身タイツなおじさま
先日、トレーニング後にロッカーで着替えをしていたら、となりにいた60歳くらいのダンディなおじさまが、ぼくが欲しかったアンダーウェアの上下を颯爽と着ていました。どうやら、これからトレーニングをするようです。(格好いいなあ……)と、ぼくが羨望のまなざしを向けていると、そのおじさまは着替えを終え、くるりとこちらに背を向け、ジムへ向かって歩いていきました。
(え、ちょっ……。そ、そのまま、行っちゃうの?)
ぼくは自分の目を疑いました。
だって、そのおじさまったら、「アンダーウェアのみ」で行ってしまったのです。その後ろ姿は、もはや黒の全身タイツ……。前だって、もっこりしているに違いありません。
強者に幸あれ――。
ぼくはダンディなおじさまの背中に向かって、心のなかで敬礼するのでした。
※本稿は、『となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
『となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』(著:森沢明夫/飛鳥新社)
数々の心温まる名作を送り続けた小説家・森沢明夫の前代未聞の人間観察エッセイ。
疲れた毎日に最高な「心のプロテイン」となる、スポーツクラブ奮闘日記。
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