次の刹那……
「おっ、とっ、と~っ」
と言いながら、おじさまは、そのまま後ろに勢いよくひっくり返り、盛大な尻もちをついたのです。
どうやら、靴下を脱ごうとしたのに、かかとに引っかかって脱げず、そのままぴょんぴょん跳ねてひっくり返った、ということのようでした。
「あ、えっと……、大丈夫、ですか?」
目が合ったので、ぼくは思わず聞いてしまいました。
すると、おじさま、何を思ったか、パンツ一丁でひっくり返ったまま、こんなことを言うではありませんか。
「はあ? 俺は昔、柔道やってたからよ、こういうときも、ばっちり受け身を取れてるわけよ」
いやいや、あなた、尻もちついたとき、思いっきり後ろのロッカーに後頭部をぶつけていましたけど(汗)
過去の栄光にすがり切れない、まさに愛すべきおじさまに、やたらとほっこりしてしまったぼくなのでした。
※本稿は、『となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
『となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』(著:森沢明夫/飛鳥新社)
数々の心温まる名作を送り続けた小説家・森沢明夫の前代未聞の人間観察エッセイ。
疲れた毎日に最高な「心のプロテイン」となる、スポーツクラブ奮闘日記。
読めば誰もが笑って元気になれる!




