『婦人公論』8月11日号の表紙に登場している風吹ジュンさん(表紙撮影:篠山紀信)

ペースダウンも楽しいことだと捉える

50歳くらいの時に体の不調が続いたことがあり、「これから先のために、動ける体を作っておかなくては」と気づき、生活を変えていきました。ピラティスで体幹を鍛え、食事で胃腸に負担がかからないように野菜を多く摂るようにして、漢方やサプリメントも取り入れるようになりました。

その後、中国茶好きが高じて産地にまで興味が湧き、中国の山岳地帯を巡るハードなトレッキングに挑戦することができたのも、動ける体を保っていたからこそ。さらに、60歳の時には、登山家になった中学時代の同窓生に誘われて、故郷である富山県の立山に登ることになって。これがとても楽しくて、すっかり登山の魅力にはまってしまいました。

一昨年、北アルプスの剱岳登山に挑戦するテレビの企画に声をかけていただいたのですが、剱岳は、垂直の岩場を鎖を伝って登るようなところが何ヵ所もある、難易度の高い山です。無謀ではありますが、湧き上がってきたのは、「もし登るなら、年齢的には今が限界だろう。やらなきゃ」という思い。専門家のもとで1年間訓練を積み重ね、昨夏の本番には、頂上まで登り切ることができました。

挑戦してよかったですよ。訓練を通して体力がつき、さらに動ける体を手に入れました。その結果、今までよりもずっと自由になった。あの時「もう遅すぎる」と、年齢を理由に尻込みしなくて本当によかったと思います。

今年3月まで放送されていたドラマ『やすらぎの刻~道』では、ヒロインの90代までを演じました。役作りのためにたくさんのお年寄りを観察しましたが、世の中にはいい見本となる先輩方がたくさんいらっしゃって、見ているだけで元気が出ます。

どうせ長生きするなら、楽しまなくては。徐々にペースダウンしていくのは避けられないとしても、それを楽しいことだと捉えたい。好奇心を持って欲張りに生きて、何歳になっても自由に軽やかに、変化し続けられたらいいですね。

 

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