唐音の広がりは限定的に
こうしてもたらされた漢籍(漢文で書かれた書物)・漢詩・仏教経典は、日本で音読、また訓読されることになる。その中で、大量の「漢語」が日本語として定着していく。
漢籍の多くは訓読によって理解されたが、個別の漢語は音読のまま定着したのである。ここでの音がのちに「漢音」となるのであるが、仏教経典の多くは相変わらず呉音で読まれ続けた。
鎌倉時代になると、新たな仏教の宗派が起こってくる。臨済宗、曹洞宗といった禅宗もそれに含まれるが、これらは中国から新たに伝えられたものである。その教義とともにさまざまな概念も伝えられ、それにともなって新たな漢語も取り入れられた。
その音も呉音・漢音とは異なる特殊なものとなっており、これが「唐音(宋音ともいう)」と呼ばれることになる(トウオン・ソウオンとも読むが、慣例でトウイン・ソウインと読むことが多い)。ただし、すでに多くの漢語(呉音・漢音)が日本語の中に定着していたこともあり、新たな漢語(唐音)の広がりは限定的なものとなった。
※本稿は、『漢字と音読みの謎を解く-呉音・漢音・唐音の奥深い世界』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『漢字と音読みの謎を解く-呉音・漢音・唐音の奥深い世界』(著:中澤信幸/中央公論新社)
遣唐使がもたらした漢音、仏教用語に多い呉音、同じ仏教でも禅宗にまつわる唐音。
これらの音が日本に伝来した時代や経路、定着した経緯を、音韻史の専門家がわかりやすく解説。
ややこしくて面白い、音読みの世界への招待。




