2万円もあれば十分
日々家で食べているものの値段を冷静に計算してみると、自炊であれば、月に2万円もあれば十分「食べていける」すなわち「生きていける」ことがわかったのだ。驚くべき少額である。まったく意外なことであった。何しろスーパーへ買い物に行くたびにレジで2000円とか3000円とか普通に払っていたので、食べていくにはそれなりにカネがかかると何の疑いもなく思い込んでいたのだ。
あれは一体何だったのだろう。その2000円だの3000円だので購入した食品を食べる人間はもちろん私一人しかいない。ってことは、考えたくないことだが、ついあれも食べたいこれも買いたいとポイポイとカゴに放り込み、その多くを結局食べ切ることができずに捨てていたとしか考えられない。
でもそのような無駄をしなければ、月2万円!
……ってことはですよ。
よく「食っていくためには働かなきゃならん」と言う。私も過酷な要求をどこまでも突きつけてくる会社との付き合いにウンザリするたびに、そう自分に言い聞かせて耐え難きを耐えてきた。でも実際には、自分一人が食っていくために必要なお金なんぞ、せいぜい月に2万円もあれば十分だったのだ。繰り返し言うが2万円ですよ! そのくらいなら、立派な大企業に必死にしがみつかずとも、人手不足に悩んでいるご近所のお店でアルバイトなどすれば無理なく稼げるんじゃないだろうか。
少なくとも、会社を辞めたくらいで「食べていけるか」を心配する必要なんてなかったのだ。むろん家賃は必要だが、収入に応じて格安物件を探せばよいのではないだろうか。空き家が増え続ける今、田舎に行けばタダ同然の家もあると聞く。つまりは、最低限の暮らしをする覚悟さえあれば、会社を辞めることをそんなに怖がることもないんじゃ?
……と、いきなり小躍りしたんだが。
人生はそれほど単純ではなかった。
この朗報にホッと一息ついた途端、たちまち、別の懸案がムクムクと頭をもたげてきたのである。
確かに、きっと食ってはいける。しかし人生とは、食っていければそれでよいのだろうか?
