「理想の自分」が消える

これはドウデモイイようでいて案外、というか、考えれば考えるほど非常に深刻な問題である気がしてくるのだった。

だって会社を辞めたが最後、私はもう私じゃなくなるのだ。「理想の自分」はすっかり消え失せ、表面的には頑張って平気を装っていても、内心は惨めな気持ちをどうすることもできず、死ぬまでコソコソ生きることになるかもしれないのである。

そう思うと、真面目に恐ろしかった。

ただ唯一の救いは、私にはストックがあるということだ。そうだよ服も靴も化粧品も山のように持っているんだから、少なくともしばらくはキラキラをどうにかキープしていけるはず。先のことはわからぬが、当分はそれでよしってことで……なーんて甘いことを考えていたら、そのような逃げ道もたちまち断たれたのである。

※本稿は、『買わない生活』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

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買わない生活』(著:稲垣えみ子/東洋経済新報社)

幸せになるために、「買うこと」に命をかけてきた著者が、50歳で会社を辞めたことをきっかけにはじめた「買わない生活」。

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