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日常の中で「間違った判断はしていないはず」と、何かの決定に対して「思い込み」をしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「人は誰しも思考のクセがあり、過去の体験や直感に従って間違った判断をしてしまいがちなのだ」と語るのは、経済学者の大竹文雄さんです。そこで今回は大竹さんの著書『思い込みの経済学-AI時代のお金・仕事・社会』より一部を抜粋し、不確実な時代を生き抜く考え方のコツをお届けします。

優れたリーダーは人間もAIもうまく使う

企業で重要な意思決定の一つは、誰を管理職に選ぶかである。管理職が優秀かどうかは、企業の生産性に大きく影響することが知られている。では、どうすれば優秀な人を管理職に選べるだろうか。実際の仕事を模した実験室実験によって、優れた管理職の特性とその影響について厳密に分析した、ハーバード大学教授のワイドマン氏とデミング氏らの研究では経済的意思決定能力に優れた人が管理職に向いていた。彼らは別の研究で、AIエージェントを用いたチーム協働実験により、人間のリーダーシップ能力を定量的に測定する新たな手法を開発した(Weidmann, Xu and Deming, 2025)。

実験では「隠れたプロファイル課題」と呼ばれる集団意思決定の問題が用いられた。これは、解答に必要な手がかりがメンバーの間に分散して配布されており、誰か一人の知識だけでは解けない仕掛けになっている課題である。

リーダーは、メンバーから的確に情報を引き出し、それらを統合して最終的な判断を下す役割を担う。ここで、同一のリーダーに、AIエージェントをメンバーとするチームと、人間をメンバーとするチームの両方を率いてもらい、それぞれにおけるチームへの貢献度を測定したところ、両者の相関係数は0.81と、完全相関の1にかなり近い値となった。つまり、AIチームを率いて高い成果を出すリーダーは、人間のチームを率いても高い成果を出すということである。AIを相手にしたリーダーシップ能力の測定が、人間を相手にした場合の代理指標として十分に機能しうることが示されたわけである。

さらに、AIを使ってリーダーシップ能力を評価するコストは一人あたり23ドルにすぎないが、人間を使って評価すると114ドルもかかる。AIを用いれば、人を使って測った場合の約5分の1の費用で済む。リーダーシップ能力はAIで計測できるだけでなく、安価に計測できるのである。