AI時代に必要な能力

AIをうまく使いこなせる人と、人間をうまく使いこなせる人にはかなり共通するものがある。しかし、人間を使う際に重要なポジティブな感情表現や、感情を知覚する能力はAI相手では不要だ。

今までそうした能力が低かったために、職場でリーダーとしての適格性が低いとされていた人は、AIを相手にリーダーとして振る舞って生産性を高めることができるだろう。一方で、人をやる気にさせてチームの生産性を高めることはできるものの、リーダーとしての他の能力が低い人は、AI相手だと十分に活躍できない。

つまり今後は、人間との対応があまり必要なく、AIとうまくやっていく能力のほうが大事になる場面も増えるかもしれない。一人でAIと向き合って成果を出すタイプの仕事は、確かに広がっていくだろう。

しかし、最終的にサービスやモノを使うのは人間である。どれほどAIが優れた分析や設計を行っても、それを使う顧客、判断する経営層、実装する現場の人々は、すべて人間である。だからどこかの段階で、必ず人間との接点が生じる。その接点で相手の心理や状況に寄り添い、納得を得て、共に動いてもらう力は、AI時代にもなお重要な能力として残り続ける。

※本稿は、『思い込みの経済学-AI時代のお金・仕事・社会』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
「金は安全資産」は思い込み? 魅力的に見える心理的メカニズムとは…大竹文雄「大きな利益を得るシナリオはたった一つしかない」
なぜ人は<ガチャガチャ>を回すのか? 大竹文雄「実は経済学的に合理的」…「もう1回」と思ってしまう理由
AIでは代替できない「人間の時間」の価値が跳ね上がっていく…<使う人・使わない人>の格差とは? 大竹文雄が語る「これからの働き方」

『思い込みの経済学-AI時代のお金・仕事・社会』(著:大竹文雄/中央公論新社)

本書はお金、仕事、社会のルールなどとの向き合い方を、経済学の観点から考える。

AIは人間の仕事や判断を代替するのか、それとも補完するのか。

不確実な時代を生き抜く考え方のコツを探る。