三島が先頭に立ってカウンターの女性スタッフに声をかけ、答えを書き込んだ謎解きブックを手渡した。その女性スタッフの、目尻のほくろに目が行く。
吉晴が口を開くよりも先に、三島が「かおりん!」と嬉しそうに呼びかけた。
「会いたかった! 探したよ」
「え……鈴ちゃん! うそー! めっちゃうれしい。偶然? じゃないか。加々見先生! 来てくださってありがとうございます」
「日下部お疲れさま。楽しかったよ。準備が大変だったでしょう、このイベント」
「あはは。調べものが多いのと、百貨店は老若男女に開かれた場所だから、お子さんでもひらめいたら解ける謎にしてほしいってオーダーが難しくて。でも、百貨店の方に仕事の背景をたくさんうかがって、昔の資料も見せていただいて、本当に楽しかったです」
「それはよかった。いい体験をしたね」
「はい」
日下部佳織は健やかに育った夏の花のように微笑み、「長旅お疲れさまでした。こちらがエピローグです」と福来屋のマークが入った封筒を三島に渡した。続けて吉晴に白い手袋に覆われた手を差し出す。
「加々見先生も、解答をどうぞ」
「うん。――ん、あれ?」
日下部に謎解きブックを渡そうとしたところで、吉晴は梅木がついてきていないことに気がついた。振り返ると、なぜか彼はカウンターから距離を取って、手元の謎解きブックを読み返している。
「先生?」
