高齢者:食が細くなる時期の「健康維持」を支える一杯

年齢を重ねると、多くの人が「食が細くなる」という共通の悩みを抱えます。「脂っこいものが食べられない」「食事に興味が湧かない」――こうして食事が減ると、たんぱく質不足から筋力が落ち、転倒、骨折、寝たきりへと一気にリスクが高まります。これはフレイル(虚弱)の典型的なパターンで、認知症リスクの上昇にも直結します。

そんな時期にこそ、スープはもちろんのこと、ラーメンは非常に頼りになります。麺は柔らかく、噛む力が弱くなっていても食べやすいからです。温かいスープは胃腸の血流を促し、消化を助けてくれます。スープには骨や肉から溶け出したアミノ酸などが含まれており、これらを食事全体の一部として、卵・肉・野菜などの具材と一緒に摂ることで、不足しがちな栄養素を補う供給源の一つとなります。

和田秀樹
(写真提供:KADOKAWA)

「固形物はあまり入らないけれど、ラーメンなら食べられる」という高齢者は珍しくありません。これは、食べやすさと美味しさ、そして温かさが同時に満たされているからなのです。もちろん嚥下機能や持病の有無による個人差はありますが、ご自身の状態や体調に合えば、「しっかり食べたいけれど食べにくい」という時期を支える有効な選択肢の一つと言えるでしょう。

さらにもう一つ、外食には「行動のきっかけになる」という大きな力があります。たとえば、「駅前に新しい店ができたから、今度行ってみよう」と目的が生まれるだけで、自然と外出の予定が生じ、行動の意欲が湧いてきます。店の場所を地図で調べたり、SNSでクチコミを確認したりする作業も、実は前頭葉を刺激する立派な脳のトレーニングです。そして実際に店まで歩くことは、そのまま足腰の筋力維持に役立ちます。

現代社会において、栄養不足と同じくらい深刻な健康リスクがあります。それは孤独です。特に高齢者の場合、配偶者に先立たれたり、定年退職で社会との接点を失ったりして、1日中誰とも話さず、家で1人で食事をする孤食が増えています。実のところ、孤独はタバコを吸うのと同じくらい、あるいはそれ以上に死亡リスクを高めるというデータがあります。人との交流がなくなり、刺激のない生活を送っていると、前頭葉の機能が低下し、うつや認知症のリスクが一気に跳ね上がるのです。

さらに、1人で食事をすると、「パンだけ」「お茶漬けだけ」のように、どうしても簡単なもので済ませがちになり、低栄養に拍車をかけます。こうした孤独と低栄養の負のスパイラルを断ち切るために、私は積極的にラーメン店をはじめとした外食に出かけることをお勧めします。

お店には、家の中にはない独特の活気があります。厨房から聞こえる調理の音、店員さんの威勢のいい声、他のお客さんの話し声や気配。これらすべてが、脳にとっては心地よい刺激となります。たとえ誰とも会話を交わさなくても、その場に身を置いて食事をするだけで、適度な人の気配を感じて精神的な気分転換になるのです。

なかでも、ラーメン店は「1人で入りやすい」空間の一つ。フレンチや焼肉店に1人で行くのはハードルが高くても、ラーメン店なら誰でも気軽に暖簾をくぐれます。そこにはサラリーマンもいれば、学生もいる。老若男女が集まる活気ある空間に身を置くこと自体が、社会とのささやかな接点になるのです。「今日は天気がいいから、あの新しい店に行ってみようか」。そう思って家を出ることは、立派なリハビリであり、運動であり、社会参加です。家に閉じこもって栄養のないものを食べるより、外に出て活気の中でチャーシュー麺を食べる。その行動力こそが、心と体を若々しく保つ秘訣です。