シンプルでわかりやすい人
――印象に残っているシーンを教えてください。
女学校時代に、みんなで同人誌『黎明(れいめい)』に載せるための写真を撮りに行くシーンです。そこで、忍は男装をしてくるのですが、衣装合わせのときや台本を読んでいる段階から、忍はなぜこれが着たかったのだろうと考えました。
きっと、忍は男とか女とかの“くくり”ではなく、ただ「角田忍」という人間でいたかったから、着てみたいものを着ただけではないかと思えました。見たいものを見て、書きたいことを書いて、自分が思ったことを素直に言葉にしたいだけなのに、時代や環境がそれを許さない。
実は、根っこの部分はとてもシンプルで分かりやすい人だと思えてからの方が、忍を演じやすくなりました。
――珠役の石橋さんの印象や感想を教えてください。
石橋さんが演じている珠とは女学校時代のシーンからご一緒していますが、とてもチャーミングです。宇野千代さんは、いろいろな分野でご活躍されたこともあり、多才で華やかな人という印象を持っていましたが、きっとこんなふうにチャーミングな人柄だったのだろうなと、石橋さんが演じる珠を見て腑(ふ)に落ちました。
最初の女学校時代は、忍が決めたことを、珠に決意表明させてもらっている感覚でしたが、物語が進むにつれて、忍だから珠に言えることがあると思いました。
珠にとって、力になる言葉や考えるきっかけになるようなエッセンスを与えられる人物でいたいと思っています。