次の日、食料の買い物に出た。
以前、近所の人たちが「地震の後、ロッキーがいちばん早く開いた。あのときはありがたかった。だから今もロッキーで買う」と言っていたスーパーのロッキーだ。
今回もロッキーは開いていた。棚には整然と商品が並んでいた。いつもよりお客が多いだけで、平然とお客は買い物してたし、店員も穏やかに対応していた。肉も牛乳も卵も買えた。ないだろうと思っていた水もあった。今さらの備蓄用に、三本買った。
次に、猫フードと犬のおしっこシートを買いに、ホームセンターのナフコに行った。こっちは整然の真反対で、おしっこシートやトイレットペーパー、かさばる紙製品が通路に思いっきり散乱し、お客はそれを拾ってレジへ行く。いやはや、潔いとも言える、シュールな光景だった。店員さんたちはそれを平然と受け止めていて、ごく普通に「ポイントカードから六十七円ぶんお引きしましょうか」なんて声もかけてくれた。
大地震は、異常な経験だった。
揺れるのも、ライフラインへの不安も、異常で怖いものだった。だからあたしはずっと歯を食いしばって、いつもどおりのふりをしていたのだ。そしたらやっぱり、人間の力が効いた。隣人のMさんの「伊藤さん、大丈夫ですか」が効いたように。Eさんを迎えに行くことで、あたしの心の中で、なんとなく覚悟が決まったように。
お店の人たちが肩の力を抜いたような「普通」の対応をしてくれて、そこでなんだか目が覚めたような、日常を取り戻したような感じを味わったわけだった。
『サワコと比呂美 女じまい』(著:阿川 佐和子, 伊藤 比呂美)
「ブラジャー卒業」「さらば、つけま」「偲ぶ会にピンク着て」「親の骨はコーヒーミルで……」 大まじめに非常識、70'sふたりの女がたりの結論は「歳をとるって面白い!」。
親・夫・親友――大切な人との別れは、こうして生きる力になった。






