厚生労働省が2025年に実施した「国民生活基礎調査」によると、介護する人・される人が共に75歳以上の割合は37.1%で、過去最高を更新したそうです。そのようななか、タレントの岡田美里さんは、15歳のときに家を出ていった母と、42年ぶりに同居生活をスタート。60代で、知識ゼロから親の介護に向き合うことになりました。今回は、岡田さんが7年間に及ぶ介護の日々を率直に綴った『今だから笑える 笑えない介護の話』より、一部を抜粋してお届けします。
万難を排して決めた引っ越し日
母の介護をするために山梨へ出発したのは2019年8月のことでした。
テレビでも「熱中症対策を!」と盛んに呼びかけられていた猛暑の中、私は「素晴らしい引っ越し日和だわ。なんて幸先がいいのかしら」「豊かな自然に恵まれた新天地へ移住するのね」「夏はクーラーいらずよ」などなど、ポジティブな言葉を思いつく限り口にしながら引っ越しのトラックが来るのを待っていました。
なぜかといえば、本当は相変わらず不安だったからです。
知り合いのいない土地で暮らせるかしら? 山梨の家は見えないところで朽ちていたりしないかしら? 私はストレスでおかしくなってしまわないかしら? 憂鬱の種はいくらでもありました。
せめて出端をくじかれるようなアクシデントに遭遇しませんように、私の気持ちが後ろ向きになってしまいませんように、と祈るような気持ちを込めて、引っ越しの日は「吉方位」を見るアプリで決めました。
自分なりに万難を排したと納得したかったのです。