イラスト:タムラサチコ
わかってはいるけれど、言い訳ばかりして先延ばし。その積み重ねで、いつしか家にはモノがあふれ返る。一人暮らしなのにモノに囲まれて暮らす米山さん(仮名、70歳)の場合は、片付かない要因があって……(「読者体験手記」より)

預けたことさえ忘れているのでは?

2人の子どもが成人した後、一人で暮らして20年になる。友人などが来るときには、人が出入りする部屋や目に付く場所は前日に掃除しておくので、「いつも、きれいに片付いているね」と言われる。たしかに、客人の目にはそう映るのであろう。しかし、他人が足を踏み入れない場所は惨憺たる状態だ。

モノを大切にするのが、私の取りえ。60歳まで勤め上げた会社員時代の洋服や鞄を、今も2階の部屋のクローゼットと押し入れに保管している。まだ着られるものを処分する決心がつかないのだ。

息子たちが泊まりにくるときのことを考えると、布団も捨てられない。実際は、もう何年も息子たちが泊まったことなどないのだが……。数年前に、長男が自分のモノを押し入れにしまうスペースを作るのに布団が邪魔だったのだろう、圧縮袋に収納して以来、そのままほったらかし。ぺたんこに潰れて、もう元に戻らず使えないのでは、と思うほどである。

子どもたちの荷物が、我が家が片付かない最大の要因だ。長男は、アパート暮らしで手狭だからと、孫の成長につれて不用になったものから、読み終えた本、どう見ても今後履くことはないであろう靴まで、いろいろな荷物を持ち込んでくる。いちばん困っているのは、庭に積んである車のタイヤだ。何年も放置したままだが、処分しようにも重くて、私の力では動かすこともできない。

そんな長男が最近になって、「あいつに、自分の荷物は自分の家に持ち帰らせてはどうか」と言い出した。次男は一軒家に住んでいて、自分より荷物を収納する場所があるはずだというのが、彼の主張である。しかしこれは「その代わりに、自分がモノを持ち込みたい」という魂胆があってのこと。

たしかに次男は次男で転勤が多く、引っ越しのたびに次の勤務地では必要のないものを送ってきていた。大きくて場所をとるスーツケースに、一時期趣味にしていたテニスのラケット、学生時代の教科書など、預けたことさえ忘れているのではと思うものばかりだ。

「我が家は倉庫じゃない!」と腹立ちまぎれに処分してしまいたい衝動に駆られるものの、いずれ自分でどうにかするだろうと思い、そのままになっている。息子たちに言い出せない自分が悩ましい。