「私をここまで歌わせたもの。それは愛する歌と詩への思い。そして、平和への祈りです。」

素敵な出会いが私を作った

若い頃は女優と歌手、2つの仕事をしていましたが、最終的に歌が残りました。それでも、演技してきた経験が歌詞の解釈に役立っているように思います。

今までのキャリアで楽しかったのは、各地で行ったライヴやコンサート。どれも最高に楽しかった。

一方で最も悲しかったのは、歌手仲間であるジャック・ブレルの早世。54年にパリの映画館でブレルの歌を聴いたときは、あまりの感動に椅子から落ちそうになったほどです。当時フランスでは、ベルギーを一段低く見る風潮がありました。だからレコード会社はベルギー人のブレルを差別的に扱っていたのですが、私が自分のこと以上に熱心に働きかけ、彼をデビューさせることができた。

2013年に発表したアルバム『ジャック・ブレルを歌う』にも、彼の多くのオリジナル曲を収めましたが、今回のツアーでも、何曲か歌いたいと思っています。ちなみに夫のジュアネストは、もともとはブレルのピアニストで、彼の死後、私の伴奏者になったのです。代表曲である「行かないで」も、詩はブレル、曲はジュアネストが書きました。

私をここまで歌わせたもの。それは愛する歌と詩への思い。そして、平和への祈りです。

今、世界ではたくさんの戦争が起きており、顕在化していない諍いも増えているようです。ヨーロッパではネオ・ナチが勢力を伸ばし、人々は、テロへの恐怖を募らせている。止まることを知らない難民の流入にも神経をとがらせています。

第二次世界大戦を経験した私には信じられない光景です。多くの命を犠牲にやっと獲得した平和と自由を、なぜ捨てようというのですか。もう一度考えてほしいものです。

日本での思い出を振り返れば、楽しいことばかり。メルシー。皆さん、私の歌を聴いてくださって、ありがとうございました。

人生はまさに贈り物です。どんなに悪いことが起きようが、それでもやはり何かしらのギフトがあるもの。私は、この人生ですばらしい人々との出会いに恵まれました。そのことに感謝しています。生まれ変わっても、やはりジュリエット・グレコになりたいと思っています。