「栄冠は君に輝く」を作った頃の古関裕而。自宅のハモンド・オルガンの前で(写真提供:古関正裕さん)

「やはり球場に立ってよかった」

古関は、作曲を前にして大阪の藤井寺球場での予選試合を見学し、その後で甲子園球場を訪れている。そのときの感想を「無人のグランドのマウンドに立って周囲を見回しながら、ここにくり広げられる熱戦を想像しているうちに、私の脳裏に、大会の歌のメロディーが湧き、自然に形付けられてきた。やはり球場に立ってよかった」と述懐する。

そして出来上がったのが「栄冠は君に輝く」であり、歌は伊藤久男が吹き込んだ。4拍子の快活な曲調で長い音価や付点がバランスよく配され、音型も変化に富む。「全国高等学校野球選手権大会」は、平成30年(2018)に第100回を迎えたが、「栄冠は君に輝く」は第30回から休むことなく、開会および閉会のセレモニーで歌い続けられている。

 

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