「服の話 着たり、縫ったり、考えたり」行司千絵・著/岩波書店
 

服はその人自身の人生をあらわす

また一方で、作家の瀬戸内寂聴さんやゴリラ研究の第一人者の山極寿一さんらに「かけがえのない一着」の話を聞いたことで、服はその人自身の人生をあらわすものでもあること、おしゃれのためだけではなく心の支えにもなりうることも教えられました。

私自身、一番楽しいのは母の服づくりです。家族の介護を終えて自分の時間を持てるようになった母に、「着ていて楽しい服をつくってあげたい」と考えた明るいピンクやきれいな花柄を本人も面白がってくれて。グレイへアを活かしておしゃれな眼鏡をかけ、スニーカーで歩くようになりました。

そんな母を見ていると、性別や年齢にとらわれず「いま着たいもの」を着ることが、これからの人と服の関係をより良く変えていってくれるようにも感じます。

こうして一冊書き終えても、「服ってなんだろう」「服をもっと楽しむにはどうしたらいいだろう」という問いの答えは見つかっていません。これからも考え続けていきたいと思います。