毛沢東の死後、王朝を再興したが…

だが、話はこれだけで終わらない。大中華佛国の残党である李丕瑞が、三期普渡の経典を隠し持って文化大革命の嵐のなかを生き残り、捲土重来の機をうかがい続けていたのだ。やがて1976年9月に毛沢東が死ぬと、李丕瑞をはじめ教団の古参信者たちは機が熟したとみて、王朝を再興するべく盛んに動きはじめた。

そして1979年2月、李丕瑞たちは先主石頂武の遺児・石金〓(〓は金3つを重ねた字)を苦労の末に見つけ出し、ひそかに接触。「あなたさまは皇帝になるべき人間なのです」と石金〓を説き伏せ、ついに1983年10月に李丕瑞の自宅で即位式を挙行する。

第二次大中華佛国においては、王朝再興の功臣・李丕瑞は他二人の古参信者とともに丞相に封ぜられ、大中華佛国護国軍も再建された。彼らは若き新皇帝のもと、憎っくき中国共産党の打倒と三期普渡による世界征服を誓ったのであった――。

もっとも、当局がこんなものを認めるはずがない。即位式から2ヵ月も経たないうち、後主石金〓と王朝の諸将はあっさりと逮捕。裁判によって李丕瑞ほか一人が死刑となり、石金〓も懲役刑を受けたことで、大中華佛国は今度こそ完全に滅亡したのであった。

『現代中国の秘密結社 -マフィア、政党、カルトの興亡史』(著:安田峰俊)