「他人と比べるのではなく、自分の個性をもっときわめていけばいいんだなと、肩の荷がスッと下りた気がしたのです。」

私を送り届けた後、母はいったん茨城の自宅に戻り、夕飯の支度をして父や姉と食べた後、再び群馬の教室まで私を迎えにきてくれました。一言も文句を言わず、私のために毎日4時間近くも車を走らせてくれていた。しかも、うちから教室までの道は一部、街灯もない真っ暗な農道で(笑)、よく流れ星を見ました。

レッスンが終わるのが夜の10時頃だったので、家に帰りつくのは夜中の12時過ぎ。ようやく部屋に戻り、倒れ込むように私が寝た後も、母は翌日の準備などをしていたようです。

宝塚の寮に入ってからも、温めるだけで食べられる手料理を、母はこまめに送ってくれました。私が出演する舞台も関西までちょくちょく観に来て、帰りがけに手紙を置いていってくれることも。

あるとき、その手紙に「ナンバーワンよりオンリーワンを目指してね」と書いてあり、ちょうど自分が伸び悩んでいるときだったので、その言葉にすごく救われました。他人と比べるのではなく、自分の個性をもっときわめていけばいいんだなと、肩の荷がスッと下りた気がしたのです。

その「オンリーワン」という言葉が心に強烈に焼きついていて、それ以来、私の人生のモットーになっています。「自分にできて、他人にできないことはなんだろう?」「自分の個性ってなんだろう?」って、今でもずっと考え続けているのは、母の言葉の力が大きいのかもしれません。