「(宝塚を)卒業して初めて自分の心をゆっくり見つめて、そこで行きついた結論が、「いくつもの顔」を持った存在でありたいということでした。」(撮影=初沢亜利)
記憶に残る男役として宝塚歌劇団で活躍し、惜しまれつつ2019年に退団。アーティストとして歩み始めた美弥るりかさん。20年には、退団後初となる主演舞台が、開演2日前に新型コロナの影響で中止になりました。そんななか、国内外のアーティスト16人が美弥さんを描く絵画展を開催するなど、幅広い発信を続けている(構成=内山靖子 撮影=初沢亜利)

「いくつもの顔」を持った存在に

2019年6月に宝塚を卒業し、1年半以上がたちました。退団後の活動について、卒業した時点ではノープラン。それまでは、その都度与えられた役に全力を注ぐことで精いっぱいだったので、「これから自分が何をしたいのか」と考える余裕もなければ、必要もありませんでした。卒業して初めて自分の心をゆっくり見つめて、そこで行きついた結論が、「いくつもの顔」を持った存在でありたいということでした。

舞台は、私とファンのみなさんをつないでくれる大切な場所なので、今後も舞台の世界には携わっていきたいです。でも、役者という枠に収まらず、以前から好きだったファッションやメイク、音楽といったさまざまな手段を通して自分のこだわりを表現し、美弥るりかという人間の可能性をさらに広げていきたい。「宝塚の卒業生だから、こういう路線だよね」というレールからは外れているような、私らしい活動をさまざまな方面でしていけたらと思っています。

20年に開催した、16人のアーティストとコラボした絵画展もそのひとつ。同じ人物をモデルにして多くの画家が競作するという企画は、近年では珍しい試みだったようで、多くの方に興味を持っていただけました。今後も、「そんなことをするの?」と、みなさんが意外に感じてくださるような、ジャンルを超えた企画にトライしていきたいです。