未知の人たちも秘密の友だち
別のある日。公園に大きな枇杷(びわ)の木があって、オレンジ色の実の上にきれいなお月様が出ていたのだけど、若い人は誰も気が付かないのね。それで横を歩いていたおばあさんに「素晴らしい名月ね」と話しかけたら、「あら本当!!」って話がはずんだことも。瞳がキラキラ輝いていました。
どんなに楽しくても、「この次はどこどこでお会いしましょう」といったことはありません。一期一会のさっぱりした関係。そうして見知らぬ人と会話が楽しめるのはミラクルなことだし、天からのギフトという気がします。
次の展覧会に向けて今、「こもりびと」という立体のシリーズを制作しています。拾ってきた落ち葉や毛糸や文房具などで作ったお人形を、きれいな空き箱に入れて。それをいっぱいいっぱい、細胞みたいにくっつけちゃおうと思うの。
どうしてかというと、私を含めて家にこもっている人がたくさんいるでしょう。それぞれ小さな箱の中で一人ぼっちと思っているかもしれないけれど、同じように孤独を抱えた人は世界中にいる。そう考えると、未知の人たちが秘密の友だちのように感じられて、「ああそうだ、一人じゃないんだ」「見えないけれど、実は友だちはいっぱいいる。大切なものは目に見えない……」と思えるかもしれないから。
誰もが、みんな孤独。年を重ねればさらに、一人で過ごす時間が増えていきます。人と会えない今だからこそ、孤独と仲良くする方法を一人ひとり工夫して、考えてみる。そんな毎日もきっと楽しいんじゃないかしらって思います。