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人と対面する機会が減り、顔の動きは鈍りがち──。マスク下で顔は一気に“老化”が進んでいるという。口まわり、目もとのストレッチを習いにいざ! 後編は臨床心理士の松島雅美さんに眼球トレーニングを学びに行きます。(取材・文=野原広子 撮影=本社写真部)

視力の衰えは転倒の原因に

顔トレに確かな手ごたえを感じて気をよくしていると次なる指令。

今度は顔の中のさらに小さな、眼球のトレーニングへ。

もうすぐ64歳の私が老眼を自覚したのは、41歳のとき。見ていたテレビから目を離して、手元の雑誌を読もうとしたら、文字がにじんで読めない。もしやと思い、老眼鏡を買ってかけてみたら、まあ見えること、読めること。

その後、少しずつ老眼鏡の度数が強くなって、ただ今、プラス2.5。かれこれ20年以上、老眼鏡が手放せない暮らしをしている。

さらにこのコロナ禍で、昨年5月から狭い自宅でパソコンワーク、と言いたいが、実際のところゲーム渡り鳥が止められない。タブレットを手に、あっという間に7時間という日もある。おかげで目がショボショボするのを通り越して、最近は目の周りが痛い。

もし眼球のトレーニングで目のトラブルが解消できるなら、ぜひ試してみたい。臨床心理士で、メンタルビジョントレーニングを構築した松島雅美さんは、思わぬことを言い出した。

「目の疲労は目のトラブルを招くだけではありません。メンタルや身体全体が、目の働きと密接につながっています。私たちはものを目で見ていると思っていますが、実は、目から入ってくる情報を脳に伝達することで“見て”いるのです。

さらに身体のバランスをとるのも目で、85%をコントロールする、と言われるほどです。目の使い方のクセが身体のゆがみをひき起こし、これが転倒の原因にもなります」

目の働きがこんなに大事だったなんて、考えたこともなかった。

「スマホなどを長時間見続けて、眼球を動かさないでいると、眼球の周りの筋肉はますます硬くなって動かなくなります。こうなると、老眼で困るというレベルではなくて、身体のバランスを崩したとき、どこにつかまったらいいか、とっさの判断が遅れ、大怪我につながりかねません」

考え事をしながら歩いていたら、あと一歩で電信柱に激突しそうになったことを思い出した。

「ですが、目の筋肉は日頃の生活のなかで活発に動かしていれば、何歳になっても柔らかくなります。トレーニングを続ければ身体のバランスが整い、結果的に転びにくくなるわけです」