「くすりないと不安症」に

「仕事を休むわけにいかないということですし、いろいろな状況の変化がプレッシャーになっているのだろうと思いますが、今はあれこれ考えるのは置いておいて、まずはおくすりで、症状をコントロールしてみましょう」
「はい」
「パニック発作を抑えるおくすりは1日1つ、飲んでください、それと不安時の頓服薬は、緊張する場面だなと思う前に飲んで」
「はい」
「寝つきを良くするため睡眠導入剤も出しておきますから」
「はい、ありがとうございます」

わたしは、お会計を済ませ、薬局にいき、おくすりを待った。

そして、これを飲んだら、治るのかな、そして、もし治ったら、ずっと手放せなくなるのかな、とも思った。

翌日から飲み始めた。

何となく、効いている気がした。翌々日、やっぱり、効いている気がした。その毎日が続いて、2週間後の心療内科の予約日まで一度も倒れそうにはならなかった。

「薬は合っていましたね、よかったです。ではこのまましばらく続けてみましょう。お仕事は休まなくてもやれてましたねえ」

写真提供:青木さん

この日から、このくすりはわたしの御守りになった。
財布、携帯、くすり袋、は手放せなくなった。ばくばくすることはほとんどなくなったが、くすり袋を出先で忘れたことに気づいた時は、ばくばくした。
まさに、「くすりないと不安症」であった。
日々の仕事や緊張の場面のばくばくは明らかに改善されたので、まだしばらくは仕事も続けられるかもしれないとホッとした。

くすりを切らさないように、仕事の合間をぬって、通院は続けた。診察の中で、具体的にどんな場面がしんどくなるか、よく聞かれた。着物の帯を締めないといけない時や、地下にある狭い場所のことや、チームで移動するバスの中のこと。どんなシチュエーションだと緊張感が上がるかとか、怖くて苦手な体験でも、先生には笑いながら話せるようになっていった。

先生は「薬で症状がコントロールできているので、苦手だなと思うことにも、おっかなびっくり、できるところから少しずつチャレンジしていてください。怖いモノを避けているうちは、怖いままですから」。