「最後の旅はお姉ちゃんと行こうと思ってた」
ただただ楽しかった今までの旅と違い、妹の体調も心配だったし、無事に自宅に帰すまで緊張感もあった。郡上八幡と馬籠の3泊4日の記憶はあまりない。たった一つの場面を除いて。
旅の最終日は暑い日だった。馬籠に向かうバスを待つ間、近くの土産店でアイスクリームを買い、店先のベンチに並んで座った。
「暑いね」
と言いながら食べ始めると、妹が突然、お姉ちゃん、と話しかけてきた。
「私ね、最後の旅はお姉ちゃんと行こうと思っていたんだよ」
その言葉を聞いて、今まで我慢していた思いが堰を切ったようにあふれた。
「どうして最後だなんて言うの? またどこかへ行こうよ」
そう言わずにはいられなかった。
「わからないけど、もう旅行はできないような気がするの。だから今回、お姉ちゃんと旅行できて本当にうれしかった」
妹はどんな思いで言ったのだろう。どこまで自分のことをわかっていたのだろう。
2人とももう涙があふれて止まらず、バスが来るまで人目もはばからず泣いた。