許そうと決めたのは00年。ミュージカル『太平洋序曲』の打ち合わせで渡米するとき、成田空港まで見送りにきてくれた父に僕はついつい愚痴や弱音を吐いてしまったんです。別れ際に渡されたメモを機内で見たら「人生悩んでいるには短すぎる」と書いてあって、あれは心に沁みました。今も大切にしている言葉です。

現在94歳の父は、睾丸がんなどさまざまな病で何度も手術をしてきました。認知症も少し進み、車いす生活ですが、まだまだ生きる気満々。僕は今、父から生きることの壮絶さを教わっています。生きることは綺麗ごとではないけれど、人が生き抜く姿は美しい。僕もそうありたいと思うのです。

 

自分の人生は自分で演出する

19年9月、がんサバイバーとして生きるにあたり、人生を最大限に謳歌したいという願いを込めて、「宮本亜門」から「宮本亞門」へ改名したことを発表しました。改名は初めてではありません。本名は「亮次」といいますが、姓名判断の方にこの名前は繊細過ぎて大成できないとアドバイスされ、戸籍名を「亜門」に変えたのです。すると人生が好転した。何が言いたいのかというと、自分の人生は自分で演出しなければいけないということです。

強さが欲しいと思っていた僕は、「亜門」という強い名前に引きずられるように、心の強さを備えることができました。まず「こうなりたい!」という目標を掲げれば、理想的な自分を演じるうちにいつの間にか実現しているということがあるのではないでしょうか。

もし自分はコミュニケーション下手だという自覚があったとしても、笑顔の自分を演じ続けていれば、人がたくさん集まってきて、明るい未来が拓けるかもしれません。演出家としての僕は、演者の良いところを見つけ、褒めることで魅力を最大限に引き出すよう努めます。

ぜひ、皆さんも、自分が自分の演出家になったつもりで、自分のいいところを褒めてあげてください。そうすれば、きっとあなたは輝き始めることでしょう。