前立腺がんの手術、男女の反応の差は

ステージIIと判明し、幸いにしてどこにも転移していなかったので一安心。とはいえ、ただちに治療法について検討する必要がありました。前立腺は膀胱のすぐ下にある尿道の周囲を取り巻いている小さな器官で、前立腺がんの主な治療法には「放射線治療」と、男性ホルモンの分泌や働きを薬によって抑える「内分泌治療」、そして前立腺と精囊を摘出する「手術療法」の3つがあります。

僕の場合はがん細胞の広がり具合から、放射線療法と内分泌療法を併用するか、手術療法かの二者択一を迫られました。前者は週に一度病院に通い、2年半ほどかかる。それから男性ホルモンを抑えるので、更年期のように精神的に不安定になってしまうケースもあると説明を受けました。後者に関しては、神経を傷つけずに手術するのは難しく、男性機能を失ってしまうこともある。さらに術後しばらくは尿漏れなどの後遺症が残るかもしれないとのことでした。

結局のところ、僕は手術療法を選択しました。演出家は精神的な軸がしっかりとしていなければできないし、毎週病院に通うとなると、海外遠征ができなくなるという理由から。ただ男性機能を失うことには抵抗があったので苦悩し、幾人かの親しい友人に相談したのです。

すると女性は、「そんなに悩む? 悪いところは取っちゃえばいいのよ」とスパッとした意見。対して、男性の多くはウエットな感じでした。男性にとって男性機能を失うことがどんなに深刻な問題であるのかについては、パートナーに訊いてみてください。(笑)

告知を受け、4月12日に行った記者会見には大勢のマスコミの方がみえていて、人々のがんに対する関心の高さを改めて感じました。特に前立腺がんは男性の部位別がん罹患数1位。それだけに、会見後には数多くの前立腺がんサバイバーの方から治療法に関するアドバイスをいただき感謝しています。

ただケースバイケースなので、やはり自分のことは自分で考えるしかないと覚悟し、本やネットで自分なりに勉強し、担当医と話し合いました。そのうえでセカンドオピニオンを経て、5月22日の手術に臨んだのです。