人間をマイナスでなくプラスで見る

母親の豊子さんは、春佳さんの東大合格の源泉は、精神的な強さにあると思っている。

「アメリカ時代、人種が異なり、貧富の差があり、何が『普通』なのかわからない中で、春佳はいろんなタイプの子と分け隔てなく、仲良く遊んでいました。帰国してからも、小学校の雰囲気に困惑してはいましたが、我慢強く付き合いました。ストレスもあったと思いますが、とにかく物事に動じない。『この子はすごいな』って思います。人間をマイナスではなく、常にプラスで見る姿勢がそのまま中学・高校に進学しても引き継がれたとすれば、すごくうれしいですね」(豊子さん)

豊子さんは帰国後、小学校のPTAに参加する。そのフットワークの軽さと生来のボランティア精神が評判を呼んだのか、人からの推薦を受け保護司を、その後、地元教育長より承認を受けて4年間教育委員を務めた。現在は、地元の公立中学校で「今の時代に合った、みんなの制服プロジェクト」の委員を務めている。

「PTA や教育委員を通じて、先生方のお仕事の大変さはよくわかりました。ですから、たくさんの個性豊かな子供たちを育てようとしてくださる先生を心底尊敬しています」(豊子さん)

春佳さんが聖マリアの教師とフレンドリーな関係を築き、深い信頼関係を結ぶことができたのは、母親の生き方を踏襲した結果なのかもしれない。

※本稿は、『ドラゴン桜 「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。


ドラゴン桜 「一発逆転」の育て方』ただいま絶賛発売中です

何らかの逆境を抱え、ときに悩み、悪戦苦闘しながら、東大に入学した子供と親たち。彼らは何をきっかけに、「東大」という一発逆転のチャンスを志し、壁をどのようにのりこえ、なぜ努力を持続できたのか? 「一発逆転」を成し遂げた東大生たち10人のエピソードを一冊に。