両親から肯定されたことが一度もなかった

池上 私、コロナ禍で家にいる間、「自分はなぜ女優という仕事を選んだのか」を改めて自問自答したの。私は子どもの頃、両親から肯定されたことが一度もなかった。父は怒ると手が出るし、母は梨園出身(八代目坂東三津五郎の娘)のせいか、男の子だけを大事にする。

ところがスカウトされて仕事を始めたら、第三者が私を褒めてくれて。初めて自分の居場所を見つけたようで、もっと頑張ろうと仕事にのめりこんでいった。

 私も母から良かれと思って「いい子」を常に求められてきたことがプレッシャーだったから、わかる。私は母と一緒にカウンセリングを受けて、長い間ぶつけられなかった不満もつらさも母に向かって言えたんだけど……。キミちゃんには、抱えているものがまだあったんだ。

池上 仕事をすることで自分自身を認めて、癒やしてきただけに、それがなくなった時、親との葛藤をまだ解決できていなかったと気づいたの。ネガティブに考える癖がまた出てきて、「私は必要とされていないんだ」と、自分を全否定してしまった。

 苦しかったよね……。お仕事が復活してきた最近は、どう?

池上 だいぶ立ち直ってきた。ずっと付き合っていく問題だとは思うけれどね。

〈後編につづく