孤独な心を癒すために食堂を作った

私が住職を務める福厳寺には「万福庵(まんぷくあん)」という食堂があります。

ある檀家さんの奥様がお亡くなりになり、私は生前の奥様から癌で余命宣告を受けたというご報告を受けていました。その折に奥様がひとつだけ思い残すことがあると。夫が自分で食事を作れないということをものすごく案じておられたのです。

やがて奥様は他界され、残された旦那さんが毎日のようにお墓参りにみえるようになりました。

その打ちひしがれたお姿をお見かけし、お墓参りの帰りに食事をしていただく場があればいいなと考えて作ったのが万福庵なのです。

万福庵にはメニューがありません。なぜなら家庭のご飯にはメニューなんてありませんから。お寺の職員が栄養のバランスを考えて拵えた家庭料理を提供しています。

通われているうちにお仲間ができる。同じ孤独を抱えた者同士でなければわかり合えないこともあるでしょう。さまざまな情報交換をすることで希望を見出す人もいます。そうしているうちに少しずつ悲しみや喪失感が薄らいでいく。少しずつ孤独な心を癒すというところが大切なことだと私は思うのです。

※本稿は、大愚元勝『ひとりの「さみしさ」とうまくやる本-孤独を楽しむ。』(興陽館)の一部を再編集したものです。

ひとりの「さみしさ」と うまくやる本―孤独をたのしむ。(著:大愚元勝/興陽館)現在発売中です

「老い」「おひとり様」「友達がいない」……。YouTubeの人生相談が大人気の大愚和尚が教える孤独・寂しさをのりこえる方法とは。大丈夫、その「さみしさ」は解消されます!