イラスト:松尾ミユキ
いつか使うかも? と捨てられない。ついつい買い過ぎる、貰い物を断れない―。モノが増える理由は人それぞれ。断捨離とは無縁の人たちの「言い分」や「持論」、「幸せ」。おじゃらりんごさん(仮名)の場合は――。

クッキー缶の作品が積みあがる

「使えるモノはゴミではない」というのが持論だ。前衛芸術に傾倒してしまい、赤瀬川原平先生の展覧会を見て、「ああ、前衛芸術とは、ゴミで作ることもできるのか」と、自分なりの理解をした。その影響もあってモノが捨てられない。それどころか、増殖している。

自宅から数分の距離にあるアトリエまでの道すがらゴミ置き場を覗き、作品に使えそうなモノは、《材料》として拾うのが日課だ。アトリエにはそれらがドカンと積みあがる。それに加え、創作のモチーフと称し、低価格の怪しいフィギュアをヤフオク(ネットオークション)で買ってしまう。落札した品物の値段より送料のほうが高くつくことも。さすがに歩くのも危ないくらい増えてくると、まず段ボールや梱包材などを処分していく。

ライフワークとしている創作活動の中に、クッキー缶にいろいろな品を詰める、という作品群がある。身につけなくなったアクセサリーや、使用済みの傘の骨、蚊取り線香など、缶の中に集めては作品に仕あげていくのだ。

缶の内側には漆喰を塗ったり、瓶や盃を貼りつけ彩色したり。呪文のような文言を入れることもある。缶は多少劣化していてもコンディションがよい場合があり、時にものすごく古い缶が捨てられていることも。経年変化の味というのがまた魅力だ。

中に入れたモノは、缶に守られ壊れずに保管もできるのでグッドアイディアだと思ったが、今度はその缶がどんどん積みあがることになる。

一番の問題は、作品が前衛的すぎるのか、一般の人に理解される日がまだ来ていないことだ。