ある日の夫婦2人の食卓(写真提供/有賀さん)

リフォームの人気は「増築」より「減築」

ミングルを作ろうと思ったのも、ちょうどその1年前に、社会人となった一人息子が独立し、実家の母が亡くなって、自分の人生から「手放すもの」「離れていくもの」が増えた時期でした。

受験生の息子の朝食用にと始めたスープ作りの楽しさに魅せられて、それまで続けていたライターの仕事を辞め、スープ作家へとキャリアチェンジをした時期でもありました。

さらに、50代という年齢になり、それまでと同じペースで家事と仕事を両立していくのが体力的に少々しんどくなってきた。

いくつかの要素が重なって、それまでの暮らしのスタイルを変えたいという思いが心の奥底にあり、コンパクトなキッチンを作ることにつながったのかもしれません。

このキッチンを施工してくれたリフォーム業者の方から聞いた話では、近頃は「増築」より「減築」という考え方が人気だとか。

ある程度の高齢になったなら、広々とした住まいよりも、コンパクトな暮らしのほうが、むしろ住みやすくなるそうです。そういえば、うちの母も晩年、「小さな部屋で、後ろを向いたらお茶のセットがあって、横を向けばお菓子のカゴがあるような暮らしをしたい」と、いつも言っていました。若い頃から続けてきた生活に囚われず、今の自分の年齢に合ったシンプルなスタイルにシフトしていくことで、より快適な暮らしが手に入るのではないかと思います。