水前寺清子さんの一言に涙が
当初は、「命が助かってよかった。ケガをしなくてよかった。お向かいさんのおかげだ」と感謝し、ホッとしていました。ですが、後片づけや次に住む家を探すうちに疲労が蓄積したせいか、日を追うごとに怒りや不安がこみ上げてきました。
「なぜ私がこんな目に遭わないといけないのか」「これからどうすればいいのか」。大あわてで次に住む部屋を決めたのですが、家具もなく、下着1枚から買い直さなくてはなりません。
クリスマスイブに、ようやく新しい部屋に入りました。
火事の翌日から部屋探しなどで母が上京してくれていたのですが、私が仕事から戻ると、母はクリスマスプレゼントの下着と手紙を置いて広島に帰っていました。
手紙には「これを買うとき、涙が出ました」とだけ書いてありました。それを読んだ途端、涙が止まらなくなりました。
じつはこの放火事件は、放送開始から間もないころの「ワイド!スクランブル」でも取り上げられていました。
初代MCであった歌手の水前寺清子さんが、このニュースを受け、「大下アナウンサー、寒い中、焼け出されてかわいそうに」というようなコメントを発してくださいました。いつも人の心を思いやり、歌を歌っている方ゆえに、思わず出た言葉だったのかもしれません。
それを観ていた私は、テレビの前でポロポロと涙をこぼしてしまいました。水前寺さんが、被害を受けた自分にひとときでも気持ちを寄せてくださったことが本当にうれしく、心に沁みたのです。