大伯父「死んだ後のことは、死んでから考えろ」
大人たちが話を振ってくれても、口をついて出るのは、「死んだら、どうなるのかな?」といった言葉で場をしらけさせる始末。そのうち、父の母の兄(おばあちゃんのお兄さん)である大伯父さんが、「真治、お前は最近、そんなことばっか考えてんのか?」と踏み込んできてくれた。
「考えてるよ。大伯父さんは年齢的にも一番死に近いんだから、なにか知ってるんでしょう?」
失礼な物言いです。時代がもう少し前なら、確実に折檻(せっかん)だったでしょうね。
でも、大伯父さんはあっけらかんとこう答えました。
「死んだら、死ぬほど時間があるから、死んだ後のことは、死んでから考えろ」
僕は、このとんちのような答えに面くらいました。
大伯父さんはこうも続けた。
「オレが一番死に近いのに、この程度しか答えられない。お前はオレの歳になるまでずっと考えるのか? どんなに考えても多分それは不正解だぞ」
それを聞いた瞬間、心がちょっと動くのを感じました。少し楽になったというか。ほんの少し楽なほうに揺れたというか。