散財で知った「生きる楽しみ」

大伯父さんは、そのとき、もう一つ大切なことを教えてくれました。

「どうしても死にたいなら死んだらいい。ただ死ぬときはお金を残しちゃいけないよ。そうしないと、残された者が悩み苦しむからな。なぜ死んだんだって」と。

すぐには言葉の真意を理解できたわけでもなく、むしろちょっとやけになって、手持ちのお金のほとんどを使って、そのときの最高級のベッドを購入しました。

それまで硬いシングルベッドだったから、それが本当に寝心地がよくて、熟睡できる。よく眠れるようになると、食欲も出てきます。ちゃんと食べたら、体力も持ち直す。そうすれば気持ちがどんどん晴れていく。

今度は「あれも欲しいな。お金を貯めなきゃ」「これも買おうかな。今度お金が入ったら」となり、再び働く意欲が芽生えてくるんです。

生きるうえでは、お金を使う喜びを知ることも必要なんでしょうね。「もし死ぬなら」とすすめられた散財で生きる楽しみを一つ知ることになりました。

※本稿は、『上には上がいる。中には自分しかいない』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。


『上には上がいる。中には自分しかいない。』(著:武田真治/幻冬舎)

ふがいない自分を支えてくれたのは、「言葉」と「筋トレ」だった。破れない殻。失敗におびえる自分を乗り越えるために――。再ブレイクの裏側、知られざる出来事を赤裸々に綴る。