最後の時間は穏やかに過ごしたい

母が亡くなって家を建て直している間、帝国ホテルに住んでたの。今のパートナーをノックしている時ね。食事して帝国ホテルまで彼、送ってきたんだけど、帰ろうとするから、「えー、ここで帰るの。お部屋まで送って」とか言うと、部屋の前までくるんだけど、それで帰っちゃうのよ。「もうあいつ、このヤロウ」って（笑）。ややこしいことになりたくないと思ったんでしょ。（笑）

彼とは長年の麻雀仲間だったのね。私の友達夫婦と一緒に麻雀した時も、終わると、「はい、じゃ、失礼します」ってさっさと帰っちゃうの。「え？　アンタ、送ってもらえないの？」って、その女友達に蔑まれる（笑）。だからって、彼は麻雀の誘いは断らない。彼が私とつき合う確信はもってなかったけど、息子さんが自閉症で、高齢のお母様がいることを知っていたからね、ノックし続けました。頑張りました。（笑）

彼がTBSのアシスタントプロデューサーだった頃、私はNHKと日テレとフジテレビと3つの局で掛けもちしてて、とてもTBSに渡せるスケジュールがなかった。私のマネージャーが嘘ついて、「入院してます」って彼に言ったの（笑）。彼、びっくりして、すぐ病院に行って、献血したんだって。（笑）

私は親しくなって初めて、「血を返してくれよ」って言われたの。そんな嘘ついてるの知らないし、何言ってるのかと思ったら、私が入院して輸血が必要かもしれないから献血しに行ったって。そそっかしいけど、何か役に立ちたいって、彼らしいのよね（笑）。これも息子と向き合ったからかな。

今はね、彼と同じものを見たり、同じものを食べたりするなかで、わかち合えることがいっぱい。人間の好き嫌いも、食べものの好き嫌いも似てる。最近は読む小説も似てきたの。「きっとこれはあなた好きよ」と思うから誰かにあげたりしないで取っておく。彼も本屋に行って、「これはきっと君が好むと思って買ってきた」って。

「つき合って」と言った時、最後の時間を一緒に過ごすのは、この人しかいないって思ったからね。形には、もちろんこだわりがないの。何も同じ籍に入ることが結婚だと思わないから。

私、ここまで落ち着いたのは、人生ではじめて。（笑）