「藤代」は自身と重なる部分のある役柄

私自身も歌舞伎の家に長女として生まれていますので、しがらみの多い家については理解があって、ある意味そのまんま演じたというところがあります。私の中にも「藤代」がいますね。歌舞伎役者の父(編集部注・七代目尾上菊五郎さん)は怖い人ではありませんでしたが、しゃべった記憶もあまりないんです。藤代の場合も、コミュニケーションをとっていなかった父親が突然死んでしまい、父からの手紙を受け取る。そこには父親に自分と同じ歳の愛人がいると書かれていて、どんなに驚いたかと思いますよ。「なんで生きているうちに言ってくれなかったの?!」とパニックになる気持ちがわかりました。

役所広司さん演じる父・嘉蔵の臨終に駆け付けた娘たち

次女役の水川あさみさん、三女役の山本美月さん、叔母を演じる渡辺えりさんとは、ドラマの中では終始ケンカをしていますが、「かつて仲良くやってきた時代がある」というのが画面のどこかから伝わるといいね、というお話をしました。どこの揉めているおうちもそうじゃないですか?ずっとずっと揉めているわけじゃない。笑い合っていた過去もありますよね。ガーッと歯に衣着せずに言い合っている根底には、どこか愛情があると思います。

父の葬儀に白い喪服で参列する三姉妹。次女役の水川あさみさん(中央)、三女役の山本美月さん、