それでも煙草がやめられない、というカルーセルさん

「判断なんかできていなかった」

とりあえずってことでマネージャーに連絡したのは覚えてる。「すぐに救急車を呼んでください!」ってギャーギャー言われたことも。

その後、彼から「すでに病院に予約しましたから」って連絡が入ったんですけど、あのやりとりがなかったら救急車は呼ばず、明日病院へ行けばいいわって判断してたと思う。いや、判断なんかできていなかったわね。優先順位がわからなくてモヤモヤしてたもの。

あとからマネージャーに聞いたところによれば、あたしはかなり興奮状態だったって。確かに救急車の中でもずーっとしゃべり続けてました。同居中の85歳になる姉が病院まで付き添ってくれたんですけど、姉は耳が遠くて会話が難しいから、自分で症状を説明しなくちゃと思っていたのかな。

そうこうしているうちに顔の右半分が完全に歪んでしまったんです。そのことに自分では気づいていなかったけど、どんどん話しづらくなっていって、頬っぺたの内側を噛んじゃうし……。何が何だかわからないうちに病院の治療室にいて、誰かがしきりに「生年月日は? 住所は? 失礼なことを聞きますけれど、1+1はいくつだかわかりますか?」なんて訊いてくるの。なんなのよ、うるさいわねぇとか思いながらも、答えていたつもり。

こんなところにいられないわと思い、「先生、あたし大丈夫ですから」と言って帰ろうとして、先生に「帰れませんよ」と言い渡されたりした記憶もある。(笑)

それでいて、病院で最初に行ったのは新型コロナウイルスの検査でした。「一刻を争うんじゃないのかい?」と思わなくもなかったけど、こういうご時世だからしょうがないわよね。看護師さんに「よかったです。陰性でした」と言われた時、陽性だったらどうなってたのかしら? なんてことも考えていたわ。

そのまま入院して、カテーテル手術(細く長い管を血管の中に誘導して行う手術)を受けました。幸いにして、発見が早くて軽く済んだんです。3日で退院できたし、言語障害や体の痺れなどの後遺症も残りませんでした。ドクターが若いイケメンぞろいだったのがよかったのかも。大事なことよ。生命力が蘇っちゃうんだから。(笑)