歩けるって、本当に重要

吉行 50歳くらいのとき、年の近い人たちが「若いころは平気だったのに」って、何をするにも昔と比べて嘆いていたけれど、私は小さいときから体が弱かったから、年齢や女性ならではの変化をさほど感じなかったのよね。

冨士 私はどうだったんだろう。まったく覚えてない。盛大に飲んでいたかしら。

吉行 でもこうして80歳を過ぎると、やっぱり年齢による体の変化はすごいものだなと思うわね。ただ歩くのでも、昔は何も意識していなかったけれど、いまじゃ〈頑張って〉歩いているんだから。

冨士 歩けるって、本当に重要よね。

吉行 母は90歳を過ぎても海外旅行をしていたけれど、私は、とてもじゃないけどあんなふうにはなれないなと思う。

冨士 あぐりさんは、何歳までご自分で歩いていたの?

吉行 大腿骨を骨折した98歳のとき、転んでは手術するというのを3回繰り返したら、とうとう歩けなくなってしまったわね。そこから亡くなる107歳まで寝たきりで、それがどれだけ大変なことか目の当たりにしてつらかった。

冨士 だから、一所懸命歩いているのね。

吉行 運動をするのもいいけれど、30年前にあなたに誘ってもらった俳句も、ずいぶん脳にいいんじゃないかと思ってるのよ。

冨士 それはよかったわ。あなたは芝居一筋だったから。

吉行 仕事はいまも大好き。セリフを覚えられるかどうかも、健康のバロメーターになっている気がするしね。あと気になるのは、目のことかしら。10年前に白内障の手術をしたんだけど、緑内障の疑いがあると言われて3ヵ月に1度の定期検査を続けているのよ。

冨士 目の変化は、顕著よね。私は「趣味は骨折」なんて冗談で言うけれど、それ以外のところは健康なの。1ヵ月に1回は骨の検査で病院へ行くから、そのときに検診もしてもらっているのよ。食べることが好きな私は、いつまでもフォアグラののったステーキが食べられる体でいたいから。