消費者金融3社から計200万円くらい借りて

二ツ目になると、紋付も羽織も着ることができます。見た目だけ一人前、雑用もしなくてよいのですが、その分、自分で仕事を探さなければ食べてはいけません。

ありがたいことに、私は二ツ目になって7ヵ月で、NHK新人演芸大賞の落語部門で大賞をいただいてしまいました。これはいくらなんでも早すぎた。憧れの賞でしたが、受賞の瞬間、「しまった」と思ったくらいです。実力が伴っていないことは、自分が一番よく知っている。

賞のおかげで、二ツ目の間は仕事が途切れることはありませんでした。端から見れば、とんとん拍子の噺家人生だと思います。ただこの8年は私なりに苦しみましたし、毎日が必死でした。

噺家を目指す人というのは、たいていが学生時代に落研だったり、落語が好きだったりするんです。でも私はまったく違います。高校卒業後は舞台役者を目指していました。ところがまあ、才能がない。借金の癖もつき、大手の消費者金融3社から計200万円くらい借りるような日々を送っていました。

先輩の紹介で、アルバイト感覚で化粧品のセールスを始めたところ、これが面白いように成績が伸びたんですね。20代の一般的なサラリーマンの倍くらいの年収はあったと思います。役者はやがて諦めました。

全国を飛び回り、忙しくしていましたが、入るそばから使ってしまうので、お金は手元には残りません。借金を返そうと思ったら返せたのに、バカだから利子分しか返していませんでした。