「『歳を取ったら、飽きてきて撮るものがなくなる』などといっている人もいるが、僕にはそれはあり得ない。毎年どんどんアイデアが湧いてくる」(写真提供=相原さん)
いまや一億総発信時代。インスタなどのSNSで、多くの人が画像をUPしています。カメラやスマホのカメラの機能も進化し、「上手な」写真は誰もが撮れるようになりました。では、そのなかでプロはどのように「人の心を掴む」写真を撮っているのでしょう? 
オーストラリアを中心に「地球のポートレイト」をコンセプトとして撮影してきたフォトグラファーの相原正明さん。作品を撮影した時の判断や状況を「撮り方」で、作品で伝えたかった思いや撮影する上で必要な信条などを「処方箋」として記した『光と影の処方箋』(玄光社)から、一部を抜粋する新連載。相原さんが提唱する、被写体を通して心情を表現していく「写心術」とはーー。第1回は相原さんのフォトグラファーとしての原点について語っていただきます

写真は撮れば撮るほど面白い

撮影はいつも旅の空の下。そして出合う光と影に毎日ドキドキして、時には涙して、またあるときは想定外の事態でパニックになりながらも、光と影のドラマをフォトグラファーとして40年以上追い続けてきた。

ある意味、気分的には現代の「奥の細道」といった感じで旅をして、作品を作り続けてきたのかもしれない。その旅と写真で経験・体験した多くのことを、自分の心の中だけではなく、多くの人に伝え活かしてもらえれば幸せだと思う。

旅や日常の素晴らしい光と影に出合った瞬間、「あ~残念」ということのないように、お手伝いになればという思いで『光と影の処方箋』を上梓させていただいた。

写真は撮れば撮るほど面白くなり、もっといろいろなものを撮りたくなっていく。「歳を取ったら、飽きてきて撮るものがなくなる」などといっている人もいるが、僕にはそれはあり得ない。毎年どんどんアイデアが湧いてくる。

今も風景以外では上方落語、小学生のころからの永遠のテーマである鉄道も撮っている。特に鉄道は本書にも入っているが、夜の鉄道を追いかけている。それ以外には建築不動産広告の撮影もしている。2018年で、歳が60代の大台になったのだが、日々撮りたい欲求は増々大きくなっている。