イラスト:なめきみほ
「今日もいいことがなかった」「なんだかツイてない」――。その原因は、もしかしたらあなたの口ぐせにあるかもしれません。公認心理士の大野萌子さんが長年、企業でカウンセリングを行ってきた中で、相談に来る人たちの悩みの9割は人間関係だとか。笑顔になれる言葉の使い方を伝授していただきます。(構成=村瀬素子 イラスト=なめきみほ)

生きづらさを感じる人の特徴は

家族や友だち、仕事仲間など、身近な人との関係は日々の幸せを左右する大きな要素です。

私は長年、企業でカウンセリングを行ってきました。その経験をもとにお話しすると、相談に来る人たちの悩みの9割は人間関係です。「こんなことを言われて傷ついた」「よかれと思って言ったのに反感を買ってしまった」――こうした悩みの原因は言葉の行き違い。普段、何気なく発している言葉が摩擦やトラブルを招いているケースは多いのです。

対人関係に悩み、生きづらさを感じる人には、特徴的な傾向があります。一つは、自分軸ではなく他人軸でものごとを考えているということ。「こんなことを言ったら気を悪くするかな。嫌われるかな」と相手の顔色をうかがい、過剰に気を使ってしまうのです。

そのため、本当は「こうしてほしい」と思っていても、「もしできれば……やってくれるとありがたいんだけど」と、曖昧で回りくどい言い方になりがち。何を言いたいのか真意が伝わらず、かえって不快感を与えたり誤解を招いたりします。

もう一つの傾向は、自分の信念に固執していること。「家庭はこうあるべき」「時間は守るべき」など、「~べき」が口ぐせの人は要注意です。

信念を持つこと自体はよいのですが、固執すると、たとえば約束の時間に遅刻した人を許せず腹が立ってしまうことも。結果、相手を追い詰め、自分も苦しくなります。

また、日本では謙遜が美徳とされますが、行きすぎると自己卑下に。「私なんて」「どうせ無理」といったマイナスの言葉を頻繁に使う人は、案外少なくありません。

しかし、言葉は行動につながります。常にネガティブな言葉を発していると、思考や行動も自ずと後ろ向きになりますし、他者に対しても否定的な言葉を使ってしまうもの。無意識のうちに周りを不快にさせている可能性があるのです。