「どうしたら女優として生き残っていけるのか。そう考えたときに、他の人たちが敬遠するような役だけ、枠が空いていることに気がついたんです」
10代の頃から「激しい女優」と称されてきた黒沢あすかさん。21歳のときに主演した映画『愛について 東京』(柳町光男監督)で大胆なヌードを披露して話題となり、30代で出演した『六月の蛇』(塚本晋也監督)や『冷たい熱帯魚』(園子温監督)では、他の女優たちが尻込みするような過激な役を熱演。黒沢さんは、なぜこうした役に挑んできたのか? 最新主演映画『親密な他人』にかける思いや、「王道のヒロイン」とは真逆の立ち位置で、これまで歩んできた道のりについて伺った。(構成◎内山靖子 撮影◎本社・中島正晶)

幸せな家庭があるからこそ、振り切った役をやれる

最新映画『親密な他人』は失った息子への愛にとらわれた女性と、母の愛に飢える青年の危険な関係を描いた心理ドラマです。私が演ずる恵が謎の青年・雄二に抱いているのは愛情なのか、それとも狂気なのか。淡々とした表情の裏側に深い哀しみが秘められている、大人の女優として非常にやりがいのある役でした。

この役を演じるにあたり、何よりも恵という女性をきちんと包んであげたいと思いました。自分から生まれた命を大切に育てていたのに、ある日突然、そのかけがえのない存在を失ってしまった――私自身も3人の息子を育てているので、恵の気持ちが自分のことのように共感できる。

リアルな世界で出会ったら、助けてあげることもできたんじゃないか、この人の周りには、相談できる人はいなかったのか……と。自分が子育て真っ最中だったときに助けてくれた人たちの顔を思い浮かべながら、この役を演じていたような気がします。

相手役の雄二を演じるのは神尾楓珠さん。さすが、スター!「国宝級イケメン」と言われる美しい顔立ちももちろんのこと、礼儀正しくて、共演者との距離感がきちんとわかっていらっしゃるから、共演していて、すごく居心地が良かったですね。

うちの息子たちとは別物です(笑)。うちの子たちは、上から22歳、16歳、14歳。長男と神尾くんはほぼ同い年なのに、同じ生き物とは思えない。息子たちは、私が帰宅するやいなや「母さん、母さん」と寄ってきて、あれやこれやと話しかけてくるので、いい加減、やめてくれって。(笑)

それぞれの部屋があるのに、3人ともずっと「リビング学習」したりゲームをしたりしているせいで、リビングに私の居場所がない! 仕事をしているときのほうが、精神的にはむしろラクなくらいです。